進藤守の思い出 その②  〜新人時代が終わる頃〜

総論

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【看取りのセラピスト/ティザーPV第五弾】

夜も更けてくるとこんなにも寒い。進藤守は週末の町並みを眺めつつ開店の準備を行う。実家はBARを経営しているから週末はその手伝いをする。それは昔からの習慣であり、働き出した今でもその習慣は変わることがない。むしろ多くの人と関わるこの時間が今の自分にはとても必要なことだと思えた。

グラスを磨いていると早速店のドアが開き、いらっしゃいまでとと声をかけるとそこには高橋美奈の姿がある。長い褐色の髪は綺麗にまとめられていてグレーのコートを脱ぐと、簡単なシャツにスキニージーンズというラフか格好ではあるが、その曲線美からはそんな格好でも美しく思える。

もちろんその酒癖がよければ完璧なのにと思いつつ進藤は高橋を席に案内した。

「ひとりでくるなんて珍しいですね」

「でしょー。たまにはねー。その方が気兼ねなく飲めるでしょ?みんな今は思い悩む時期ですからねー」

そこに俺は含まれてないのかと進藤は目を細める。ふふーん。とそれに気が付いているのかそうでないのか、巨大なジョッキにビールをたんまりと注文し、高橋はそれを一気に飲み干す。

「相変わらずご立派ですね」

「でしょう?これでもお姉さんなんだからね」

僕の知るお姉さんとは違うなと進藤は笑みを含む。確かに今働いている救急科の作業療法士であり大ベテランである。それをこちらからそう言ってしまうと怒られてしまうのだけど。

「進藤君ももうすぐ2年目だねー。よく頑張ったよー。まぁまだまだこれからだけど」

「自分が新人を卒業するなんて実感がわきませんね」

「そんなもんよー。まだ私だって新人くらいの気持ちでいるもん」

「それはそうでも周りはそう思っていませんよ」

どういうこと?と高橋は眉をひそめて、そこから進藤は視線をそらす。一点して笑みを含む。

「まぁそうなるよねー。変わりたくなくても時間と共に変わらなきゃならないしなぁ。ねぇ。進藤君は優璃と山吹君のことはどう思う?」

「質問の意図はわかりませんが、素敵な可憐で・・・油断すると厳しい主任さんと、生意気な新人スタッフですね」

「そうかそうか。進藤君は山吹君の近くにずっといてあげてね。あの子は優璃ととってもよく似ているから」

「だったら主任の方に一緒についておきたいですよ」

「はっは。でもそれは優璃が嫌がるかな。寂しがり屋なのにひとりが好きだから、ひとりじゃないと怖がるからね」

矛盾してません?と進藤が問うと高橋はまだまだ新人だねと空になったジョッキを置く。

「どうしてうちの男性陣、主任もだけどこう鈍いのかねぇ。乙女トークができないではないか!」

「まぁお酒を注文してくれる間はお話を聞きますよ」

現金な奴めと高橋は頬をほころばしながら眉を釣り上げる。そしてもういちどビールをください!と右手を挙げた。

はいはいと進藤は言われるままにジョッキへとビールを注ぐ。

変わりたくても変わらなくてはならない。それは俺だって同じだろうなぁ。と思いつついつまでもこんな日々が続いて欲しい。

そうとも思った。

【〜目次〜】

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【看取りのセラピスト/ティザーPV第二弾】

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